まだよく知らない人を、好きになっていいか迷ったら。

#6 怒り








婚活、そして結婚するうえで心配なこと。


それは、相手が信用できる人であるかどうか、である。




婚活に限らず、現代はいろんな人と気軽に「つながる」のが可能な時代で
インターネットを通じて知り合うことにそれほど抵抗もない。




それに、身近にいるからといって信用できる人である保証もない。




結局、その人を信じるかどうかは、自分次第だということだ。






「怒り」は、殺人事件の犯人を追う物語である。


そのテーマは、「信じる」と「愛情」だと、わたしは思う。




殺人事件とは関係がないように思える場所で物語は展開していく。


3人の経歴不詳の男と、その男たちを受け入れる人たちの葛藤。


「この人を信じていいのだろうか?」という迷いと、「信じたい」という気持ち。


「信じさせてほしい」という願いと、その男をつかみきれない苛立ちが募る。




上巻を読んで、「この中に本当に犯人がいるのだろうか?」と疑った。


殺人事件の犯人と、その3人の男は結びつかないように感じたからだ。


すでにわたしも、彼らを信じてしまっていた。






ところが、読み終えた後に、もう一度最初から読んでみたら……


「わたしは、一体、何を見ていたのだろう?」と思った。




伏線を見逃していた……という意味ではない。




犯人は最初から犯人で、そうではない人は最初からそうでなかった。


一貫して、「その人」だったのである。










人を見抜く目というのは、案外、確かなのかもしれない。

どこまで相手のことを知ったから信じられるというものでもないから、自分の目を信じるしかないのだ。




この物語に出てくる愛子は、好きな人を信じている。

というか、「どんな過去があっても信じる」と決めている。



愛子は父親の愛が自分が望んでいるものとは違っても、きちんと受け入れて自分なりの愛情を見つけた。

愛情とは複雑なもので、無償の愛だけで成り立っているものではない。

同情、あわれみ、信頼、裏切り、疑い、不安、反発、諦めなどのドロドロしたものが含まれていて、だけどそれは間違った愛などではなく、それこそが愛というものなのかもしれない、とはじめて思った。

「親なんだから、自分の子供が幸せになれると信じるべきだ!」

と、どこか潔癖に思っていたけれど、たとえそうでなくてもそれが親の愛なのだというところに落ち着いた。


信じることと愛することは、裏切られるかもしれない恐ろしさがあるけれど、
愛子のように生きてみたい。




***あらすじ***

東京・八王子で起きた夫婦の惨殺事件。犯人は指名手配されたにもかかわらず足どりがつかめない。
経歴がわからない3人の男と、その男を受け入れる人たちを中心に物語は展開していく。
この中に犯人はいるのか? そして、現場に残された「怒」の文字の意味は?







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はじめに
#1 この人と結婚するかも
#2スパルタ婚活塾
#3消滅世界
#4私たちがプロポーズされないのには101の理由があってだな
#5夏休み
#6怒り
結婚がわかる100冊リスト

美濃部由紀(Yuki Minobe)



心理カウンセラー

心理学を婚活に活用したワークブック「ココロの婚活ノート」を共同で製作。
自身も婚活をしながら婚活女子のための心理学講座「秘密の女子会」を開催している。

心理カウンセラーの活動とWebコンテンツのライターを生業にしているため、あまり家から出ないのが目下の悩み。

「わたしのことが子ねこに見える人と結婚したい」と、わりと本気で言っている。



プロフィール
大阪@婚活女子のための心理学講座「秘密の女子会」
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